ジョーダン・ヘンダーソンに最大限の尊敬を。
我らがリヴァプールが、ビッグイヤーを勝ち取った。それについては、幾らでも言いたいことはあるが、あえてまず言いたいことを書く。
ジョーダン・ヘンダーソンというキャプテンに、最大限の賛辞を送りたい。
目立つタイプではないし、正直スタープレイヤーとも言い難い。
しかし、我がチームをこの4年間ずっと支え続けてきたのは、間違いないことだ。
ヘンドに関して、僕がすごいと思う現象。それは、入団してからの8年間、彼がずっと断続的に「失格」の烙印を押され続けてきたことだ。
入団当初は、何が武器なのかわからない、適正ポジションはどこなのか、ビッククラブの器ではないと言われた。
チームに定着してから暫くして、ブレンダン・ロジャーズが監督してやってきた。流動的なサッカーに馴染めないヘンドは、スタートメンバーから外され、移籍容認の通達を受けた。
不断の努力によってスターターを取り返し、ついにキャプテンに就任する。しかし、偉大すぎる前任者と比べられ、チームの戦績も芳しくなく、キャプテンとしての資質を疑われ続けた。
チームメンバーも変わり、役割も変わる。彼のポジションは下がり、アンカーに入るようになった。そこでも、展開力が物足りない、武器がない、と批判された。
常に批判されるということは、難しい。どこかでその立場を降りてしまえば、もしくは本当に失格とされて立場を降ろされてしまえば、批判されることも止んだだろう。
つまりこれは、彼が常に高いレベルに向けて努力し続けてきた証左である。
彼は全てを乗り越えてきた。
ユルゲン・クロップは、就任時、クラブ全体に向けて「疑う者ではなく信じる者になろう」と訴えた。
また、「新しい選手の獲得より、練習が好きだ」とも言った。
ジョーダン・ヘンダーソンは、見事にこの二つを体現している。だって、この8年間、おそらく、ずっと成功を信じながら、並大抵ではない練習と鍛錬を重ねてきたのだろうから。
美しいサッカーと醜い解説、日本サッカーのこれからに期待する話
久しぶりの日本のサッカー実況解説を聞いた。
NHKのiOSアプリも音声は英語だから、本当に久しぶりに日本語で試合について聞いた。
先日のセネガル戦のことだ。
日本代表は素晴らしい試合をした。
私はセネガルを応援していたが、その意味ではとても悔しい試合になった。
褒め言葉として受け取って欲しい。
理論(戦術)と実践(ピッチの出来事)の両面でセネガルは日本を上回った。
ヒトに食いつくセネガルのディフェンス習慣を逆手に取り、見事なドリブルとパスの導線設計を行っただけでなく、適切な戦術修正まで完了した西野監督。
タクトを担い、正確なパスと高い戦術理解度を見せた柴崎選手。
そして局面で勝利し続けた大迫選手と昌子選手。
日本が勝利した要因は様々に挙げられる(裏を返せばそれだけ強い相手だったいうことでもある)
本当に素晴らしかった。
試合の解説についてはこの記事が素晴らしかったのでこちらを参照して欲しい。
ただ、それと対照的だったのは実況解説だ。本当に酷かった。
簡潔に酷かったことを言えば、チーム個別・選手個別のリサーチ結果を全く踏まえず、旧時代的な一般論を語るばかりであった点であると言える。そして、その結果言っていることが論理矛盾していても気にしない点もそうだ。
実況の方は何度クリバリとサネの身長を告げたのだろうか。
身長でその選手の特性を紹介するのは馬鹿げている。身長の高い選手の強みはヘッダーとコンタクトだというのは前時代の話だ。もっと言えば、身長は何かを成し遂げるための武器であって、何をするべきかは教えてくれない。
クリバリは(我らが)ラファ・ベニーテスとマウリシオ・サッリという二人の守備オタクから、世界で最も体系だった守備戦術の薫陶を受けた選手である。ディシプリン、ラインコントロール、カバーリング、ゾーンポジショニング、どの技術も高い。そしてもちろん強くて速い。
そういう紹介を一度でも受けていただろうか?
我らが愛するサディオ・マネについてもそうだ。
マネは速い。ものすごく速い。
ただ、速いだけでインターナショナルレベルの選手になれるほどこの世界は甘くない。
ポジショニングと規律と連携にも技術があり、そして何よりロジャー・シュミットと(我らが)ユルゲン・クロップの教えを身に染み込ませたプレッシングの技術は世界のアタッカーでも真のトップレベルにあると思う。
そういう紹介を一度でも受けていただろうか?
日本代表は後半途中に岡崎選手を入れたが、この意図の考察は何だっただろうか?
「FWを並べて攻撃的に振る舞う」
これもまた旧時代の遺物。
もちろん岡崎選手の投入の戦術的意図は様々に考察できるだろう。もちろんエリア内の人数を増やす意図もある。岡崎選手は、英国では中盤のフィルターを掻い潜るリンクマンとしての役割も評価されているし、守備も上手い。
ただ、少なくとも「FW」を増やすことと「攻撃的に」なることの間には何のロジックもない。
絶対に勝ちたいセネガルが同点の早い時間帯で「守備的な」クヤテを投入したのは何故だっただろうか?
セネガルは「すぐボールウォッチャーになる」らしい。ただ一方で「組織的な守備」が強みでもあるらしい。ついボールばかり見てしまう選手たちがどう組織的に守るのだろうか?
どんな場面でもボールウォッチャーになるというような選手はこのレベルには少ないだろう。
実態は、ボールウォッチャーになりがちな場面とそうでない場面があるだけだ。
なりがちな場面を作るのが攻撃側の仕事である。
日本は幾度となく危険な盤面をピッチに描いていた。
だからこそ、それを語ってやる言葉が無かったことはとても残念に思った。
全てを語れとは言わないが、恣意的な断片を語るのはやめて欲しい。
サッカーをやるのは選手と指導者だが、育てるのはそれだけではない。サポーターがサッカーを育てられるような環境が充実していくことを願いたいと思った。
【ワールドカップ観戦】三種の神器 スマホアプリ編
なんかちょいちょい聞かれるので、
FIFAワールドカップ観戦ライフをより楽しんでもらうための、神アプリを紹介しまーす。
NHK 2018 FIFA ワールドカップ(NHK)
戦術カメラ、最高です。
既にだいぶ話題になってますが、ほんまの神アプリ。
サッカーは俯瞰してナンボなので、戦術カメラはありがたい。
あとは地味に再生位置調整のUIも良いし、関連情報がタップするとすぐ出てくるところも良い。
さすが資金潤沢のNHKさんです(関係あるのだろうか?)
受信料払ってなくてすいません。
ちなみにWebサイトもあるのでPCからはそちらをどうぞ。
EG Meikan 2018 Russia
アプリの選手名鑑。
W杯ともなるとほんとに世界中の国の選手がいるので、知らない選手もたくさん出てきます。
そんなとき調べるのに便利。
全然深い情報はないですけどね。
Forza Football
こちらは試合の情報を見るアプリ。
W杯限定のアプリではないので、一年中スマホの中に入れておきましょう。
試合の基本データ、両チームのスカッド、試合経過、怪我人情報が見られます。
情報としてはそこまで深いものはないですが、とにかく情報へのアクセシビリティが高い!
ただ日本語訳はダメダメなので英語で使うのがおすすめ。
これらを揃えて快適なW杯ライフを!
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番外編 ちょっと上級者編
筆が走りすぎてのでもうちょっと。
Stats Zone(Tiki-Taka Limited)
フットボールはデータで語りたいんだという人にはこちら。
オタクのためのアプリです。
全プレーをピッチ上にマッピングしたデータ、およびその集計を見ることができます。
footballista
サッカー戦術について日本語で記事を見たいならココです。
結果論としての戦術ではなく、ちゃんとメカニズムとしての戦術を解説してくれます。
疑わない男ロナウドの話
2018.06.16 Portugal 3 - 3 Spain at Fisht Olympic Stadium
さすがにちょっと涙してしまった。
変な話だが、ロナウドは「本気で」この大会を獲りに来ていると思った。
一人のプロフェッショナルとしてロシアの地に降り立っている以上、この大会を獲りに来ていない選手はいないだろう。
イベリア半島の二国の選手ともあればなおさら当然のことと思う。
ただ、ロナウドは自分たちの勝利をひと時も疑うことが無い。それが並の一流選手のメンタリティと違うところだし、近年のマドリーとポルトガルを何度も救ってきた能力だと思う。
ピッチ上に立っているならば、何かを疑い始めたら負けるみたいなところはあると思う。何かを本気で目指していても、疑念というのはどうしても頭を擡げてくるものだ。
ただ、ことピッチの上でそれは邪魔でしか無い。
ロナウドはそうして近年30歳を超えてからも一層の結果を残してきた。
ロナウドの完璧なキャリアの唯一の残念なところはポルトガルという国に生まれたことかもしれない。ヨーロッパのTop of Top では無いし、スーパースターが孤立する歴史を持った国でもある。
そんな不足をロナウドは力でねじ伏せようとしている。正直うまく行くとは思えない。ただそんな外野の声は関係ないのだと思う。
イギリス風に言えば、ロナウドは「ショートケーキにイチゴを乗せに」ロシアに来ている。
普通の人は、もうショートケーキはできていると思っているし、逆にロナウドの思うようなショートケーキなんて作れっこないと思っている。
ただ、ロナウドの耳にはそんな世界の心の声は一生届かないのだろう、全く持って、良い意味で。